第100回企画 菅野まり子「山海遊游」展

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Galerie LIBRAIRIE6/シス書店では第100回企画として、
菅野まり子「山海遊游(せんがいゆうゆう)」展を9月3日 (土) ~ 9月18日 (日) まで開催いたします。
2020年に開催した「憂島巡禮(うきしまじゅんれい)」展から2年、今企画展では憂島を離れて、さらにその内奥へ向かう。
山水に心眼を洗い、幻獣たちと戯れる新作タブロー連作を中心に約25点を展示いたします。

※最終日は、17時に閉廊いたします。
※月曜・火曜は休廊日です


【作家在廊日】
9月3日(土)、4日(日)、8日(木)、11日(日)、15日(木)、17日(土)、18日(日)の15:00~より作家在廊予定です。
※変更の可能性もございます事、ご了承ください


憂島(うきしま)を離れて、さらに内奥へー 漆黒の背景に、見えない景色を透かして

擾乱の憂世を発って、遠く仙崖へと向かう旅ー

山水に動物や幻獣たちが戯れる

巡禮の鈴の音遠く幽か

憂島(うきしま)の山奥に独り入る

戰する人影なき地に

言の葉絶えて降り敷かれず

名を持つ前の気象(かたち)らが

ただ白雲とたわむれる

自ずから問う舌先はみな

礫(つぶて)となりてまろびゆく

 諍いの人語があさましく、心根を枯らし尽くしていた頃、中国古典の『山海経』(せんがいきょう)(※)を取り出した。謎の筆者はその意図も痕跡も見せず、あたかも事象そのものが語る数式のように、地理と博物が綴られている。

 嫌人癖に陥ったとき、そのような文章は実に心地よい。既読の書ではあったが、未知の地平が摩耗した心身に開闢し、えもいわれぬ山水の精気を吸うことが出来た。そして、文章に小さく添えられていた、荒唐無稽な幻獣の数々を、毎晩描き写しみることにした。彼らが自ずから棲息している異界に思い馳せていると、その平穏不動の地に自らも立っているような喜びが込み上げてきて、もはや「憂い」は小さくなり、去っていった。

 やがて白日にまぼろしを見る。首から先が現れたと思ったが、それは一つの手で、右手を掴まれたような気がした。語らず、惑わされず、ただ描き留めてみよと、筆を持たされたのだろうか。

(※)  著作者不詳、古代中国より伝わり、加筆編纂されつつ、現代に伝わったとされる地理書。山岳奥地や洋上の彼方の地勢と共に、現地に棲息する動植物や異民族について列記されている。1600年前の詩人・陶淵明も、隠棲した私室に寝転び、はらはらと同書を繰りながら、彼ら幻獣たちが住む山海に思い馳せる楽しみを、詩に残している。

菅野まり子


菅野まり子 – Mariko Sugano –
東京生まれ。多摩美術大学大学院修士課程修了。
2001年度文化庁在外研修員としてドイツ・ドュッセルドルフに滞在。
現在、東京を中心に個展、グループ展で作品を発表している。
漆黒の顔料を使ったタブローの他、羊皮紙を使ったペン画などで、神秘的な情景を描く。作品の多くは物語を想起させるが、必ずしも既存の物語が表現されているのではない。時代に滅ぼされることなく残存した古今東西のイメージ群を認識の捕縛から解放し、夢の中のように自由に遊ばせて、眼の内に去来するまま、何時(いつ)とも何処(どこ)ともいえない次元を描こうとしている。

【ご来廊の皆さまへ】
○換気のため入口と事務所の窓を開けさせて頂いております。
○入口にアルコール消毒液を設置しておりますのでご利用くださいませ。  
○会場内は15名様迄とさせて頂いております。人数を超えた場合は、恐れ入りますがお待ち頂いておりますのでご了承下さいませ。
○状況に応じて開廊時間を変更する場合はHP・SNSにてお知らせいたします。ご理解とご協力のほど宜しくお願い申し上げます。

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    ※展覧会最終日は17:00に閉廊いたします。
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